外科学臨床講義Ⅴ
研修医のための早朝講義
- 定価 14,300円(税込)
- 著:小川 道雄
- B5・468ページ・上製 函入
- 発行年月:2004年02月
- ISBN 978-4-89269-469-1
- ※記載されている所属・肩書は、出版当時のものです。
本書は、2002年に著者が熊本大学第二外科において24回行った「新入医局員に対する早朝講義」をまとめたものである。医の倫理,医師のあり方,日頃の修練、患者への対応等、現在の医学教育にかけている重要テーマを取り上げており、”社会人としての常識をわきまえた医療人”育成のために最適な書である。
研修開始時の早朝講義
1 ネクタイを着用し,白衣のボタンをかける:教室史,教室訓,勤務心得
早起きの習慣と早朝講義/教室史/教室訓/勤務心得/陣内傳之助先生の思い出/岡崎禮治先生の勤務心得/西先生語録
2 外科医にはどのような適性が必要か
外科医に要求されるもの/技術的適性と性格的適性/見学の重要性/基本手技の重要性/外科医の姿勢/習慣をつける/医師と患者の信頼関係/医師への批判と医師の自覚のなさ/セカンド・オピニオン/心ある声かけ
3 臨床医として社会人として守るべきこと:権力を振りかざしても権威は生じない
臨床医として守るべきこと/患者さんに対して/「ムンテラ」という言葉を使わない/望ましい態度と姿勢/言ってはいけないこと/インフォームド・コンセント/他の医療スタッフに対して/日頃の心がけ/社会人としての常識をビジネス作法から学ぶ
4 研修で「何をすべきか」とともに「何をすべきでないか」を学ぶ
研修で学んでほしいこと/コミュニケーション技術/患者の問いかけへの応答/河崎一夫先生の問いかけ/「刷り込み」のためのこの1年
5 – I 専門医の資格はなぜ必要か:専門医制度と第二外科における研修システム
わが国の外科研修システム/レジデント・システムの歴史と専門医制度/わが国の専門医制度/専門医の広告規制緩和の動き/専門医に期待されるもの
5 – II 医師の守秘義務
法律で定められている守秘義務/正当な理由/具体的な事例/守秘義務を常に念頭におく
6 外科の歴史
近代外科のあけぼの/無痛手術の成功/接触伝染の概念の提唱/防腐法の提唱
7 ミクリッツは手術時にマスクをさせ,手術中の会話を禁止した:消毒,滅菌,手洗い,ガウンテクニック
ミクリッツ教授/消毒と滅菌/手洗い/ガウンテクニック/手袋のつけ方/院内感染の増加/術中の注意/閉腹時の注意
8 手術の基本操作
外科的治療の歴史/手術手技に用いる用語の定義/外科の基本的操作/手術における基本的心構え/共通する基本操作/手術は手品ではない
9 結紮と糸結び
糸結び/結紮時の細かい注意/強い組織と弱い組織を結紮するとき/結紮糸の切り方/縫合糸の種類と特徴
10 – I 縫合法と吻合法
縫合と吻合/消化管吻合法/縫合不全
10 – II 形成外科からみた皮膚切開と縫合
形成外科からみた縫合/縫合と吻合で大切なこと
11 – I 術者と助手:役割と責任
専門医の広告規制緩和/術者と助手/術者の心構え
11 – II 止血鉗子は直か曲か:手技も器材も教室で異なっている
教室による手技や器材,術式の相違/外科医の将来
12 「叱る」と「怒る」は違う
手術手技研究会/千葉大学中山外科教室憲法/新べからず集
13 “ To Err Is Human”を学ぶ:FFP投与では決して血液型を間違わない
「過ちは人の常」/第二外科で起こしてしまった異型凍結血漿の投与/「医療事故検証」/「張り巡らせよ安全網」/事故発生のメカニズムと医療現場の現状
14 『大学病院で母はなぜ死んだか』に学ぶもの:自己決定権,インフォームド・コンセント,癌の告知
自己決定権/インフォームド・コンセントとセカンド・オピニオン/癌の告知/癌告知のための条件/告知はチーム医療の中で
15 読んではいけない,話しなさい:case presentation
学会の発表/症例の提示/手術のイメージトレーニング
16 良い医師は良い足跡を残す-J. Willis Hurst :診療記録の意義と記載法
診療記録の閲覧と開示/診療記録の記載の原則/カルテ記載の原則と事項/Problem-oriented system と Problem-oriented medical record/手術記録と病歴の要約の記載/診療記録の意義と保存
17 末期癌の痛みに我慢を強いてはならない
癌疼痛の発生機序/末期癌の痛みの特徴/WHOの癌疼痛治療指針/除痛法の実際/尊厳と目的をもって生涯を終える
18 死をみとる
死についての教育/死亡診断書/DNR
19 週114時間労働をどう考えるか:君たちは士官である。今からそれを自覚して率先躬行せよ
外科医の勤務/過労死の危険因子/バーンアウトの防止策/士官であるという自覚
20 医師は死ぬまで勉強を続けなければならない:M先生への「一通の手紙」
医学の進歩/学ぶべき知見の増加/生涯研修の必要性/生涯学習の条件/「今なら手術は成功していました」/最終「早朝講義」
1年次研修終了時の早朝講義
21 – I 威張らない,真面目で誠実な人に権威は自然に備わる
外科医の「ルール」/診療のルール
21 – II 「カルテに記載がない」ということは「何もしなかった」と同じである
カルテの記載/外科医の身だしなみ
22 インフォームド・コンセントと癌の告知
インフォームド・コンセント/癌の告知/「大学病院で母はなぜ死んだか」に学ぶもの
23 論文として残せる研究のないところに秀れた臨床医は育たない:臨床研究は常に反省につながる
学会発表は論文にする/論文の種類/文献の検索/論文の評価/論文の査読/論文の推敲/査読者の見るところ/なぜ論文が必要なのか
24 果報は寝て待ってもやって来ない:日々の修練,公私の区別,恩師に学ぶ,「趣味」としての「階段昇り」
恩師に学ぶ/早朝講義の意味/守・破・離/「老婆心録」/これからの日々の修練/「趣味」としての「階段昇り」/背中を見て育つ/誰にもできる「努力」
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