小児のストーマ・排泄管理の実際

¥ 3,850 税込

商品コード: 978-4-89269-442-4

関連カテゴリ

  1. 書籍・雑誌
数量

平成 7 年から日本小児ストーマ・排泄管理研究会(当時の名称は日本ストーマ研究会)学術委員会が主催する「日本小児ストーマセミナー」が開講されるようになり,平成14年で7回を数えるようになりました。編集者の一人である山崎洋次が小児外科のトレーニングを受け始めた昭和50年頃,人工肛門のケア(管理)はガーゼドーナツと称してストーマの周囲にガーゼをあてていただけでした。当然のことながらストーマ周囲の皮膚は糜爛し,ストーマ閉鎖術を行う際には次のような指示を先輩の医師から指導を受けたものでした。「皮膚の炎症がひどくかなり出血するから輸血を用意するように,また閉鎖後創感染がほとんどの場合で発生するから皮膚縫合はルーズにして排膿を容易にするか,皮下にドレーンを留置すること……」と,考えてみるとまさに隔世の感があります。現在,輸血も必要とせず一期的な創傷治癒が得られるのも外科手技や手術材料の進歩ではなく,すべてストーマケアの賜物でありましょう。そんな当時においても成人領域ではそれなりの装具の開発・販売が行われ,ストーマケアに関する教育や啓蒙も始まっていましたが,小児領域においては皆無といってもいい状況でした。その後,昭和56,57年頃より一部の施設で小児に対するストーマケアの重要性が認識されるようになり,格段の進歩がみられるようになりました。
小児ストーマケアの進歩と発展は多くの医療関係者の努力と協力によるところであることはいうまでもありませんが,なんといっても前日本小児ストーマ研究会代表世話人中條俊夫先生の功績が一番ではないでしょうか。当時東京大学小児外科教授であった中條俊夫先生がある種の無関心と冷淡に近い雰囲気の中で,有力な同志の支援を得て日本小児ストーマ研究会を発足させたことがストーマケア発展の契機となりました。そして「日本小児ストーマセミナー」も中條俊夫先生が導かれた延長線上に位置づけられるものと申せましょう。
この「日本小児ストーマセミナー」では開催の都度,講義担当者の手によるテキストが使用されておりましたが,受講者以外からの入手の要望も多く,時には多めに用意したテキストが不足するといった嬉しい悲鳴をあげることもありました。また着実に進歩してきた小児のストーマ・排泄管理を普及,定着させる意味からも本書の出版が急務であると判断いたしました。幸いへるす出版から大変ありがたい理解が得られ,本書が上梓される運びとなりました。付け加えますと,「日本小児ストーマセミナー」もストーマ管理と切っても切れない関係にある創傷や失禁ケアの充実を図るために「日本小児ストーマ・排泄管理セミナー」と改められました。これを受けて本書でも創傷や失禁に関する章を設けてあります。本書がよりよい小児のストーマケア・排泄管理の一助となれば望外の喜びです。
最後にご繁忙の中執筆いただいた諸先生方に改めて感謝申し上げます。

平成15年1月
編集者