妊産褥婦メンタルケアガイドブック

¥ 3,300 税込

商品コード: 978-4-86719-016-6

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妊産褥婦と子どもを支える方へ


多職種連携・協働して、妊産褥婦の心に寄り添い、命を救うために


 

  • メンタルケアの最新エビデンス、多職種連携・協働の方法、9つの事例等を詳述。

  • 産婦人科医、小児科医、精神科医、救急医、看護師、助産師、保健師、公認心理師(臨床心理士)、ソーシャルワーカー、救急隊員など、多職種連携・協働して、心の悩みを相談できず、一人で悩んでいる妊産褥婦を支え、母子の命を救うために。

  • 全国展開している「PEECコース」、「J-MELSアドバンスコース」の副読本。






本書の使い方(本書より)

“自殺”はさまざまな要因が絡み合って起きます。具体的には身体的・精神的・社会的な面が絡み合って起きます。1 つの要因のみで起きることはまれです。自殺=うつ病(あるいは精神疾患)による…と考えがちですが,それだけで理解するのは誤りです。産褥という時期の身体的な変化,産後精神障害,社会的な役割・関係性の変化などさまざまな要因が関与しています。したがって,多職種が関わらないと問題解決や自殺予防にはつながりません。“多職種連携”が大切といわれていますが,産褥期の自殺あるいはメンタルヘルスに対して,どのような職種がどのような仕事をしているのか,どのようなサポート体制があるのかを熟知している医療関係者・行政関係者は少ないのではないでしょうか。また,関係学会がどのような取り組みをしているのか? もその学会に属していない人ではほとんど知らないのではないでしょうか。本書は,これらに関わるさまざまな分野の専門家に協力いただき上梓しました。目次をみただけでも“妊産褥婦の自殺問題”にはさまざまな分野が関わるということがわかると思います。

総論では,妊産褥婦の自殺の実態と自殺予防の重要性・サポート体制を俯瞰しています。妊産褥婦の自殺問題の重要性が統計を含めてわかりやすく記載されています。予防・対応を実践する際には医療経済的な側面も忘れてはいけないと思います。そこで,病院内で診療保険点数がどの程度つくのかもまとめています。総論を読むことで,何が問題であり,どのような方向性に進むべきなのかを知ることができると思います。

各論では,関係学会の取り組み,各職種の実際の業務内容・方針が記載されています。それぞれの職種が実際に困った際にはどこと,どのように連携をとったらよいのかがわかると思います。精神疾患をもつ妊産婦への薬物療法についての最新のエビデンスに則った方針なども書かれており,非精神科医だけでなく精神科医にも役立つ内容となっています(妊娠したので薬をやめるように言われました…という精神症状悪化症例が多々みられています…精神科側の問題も大きく啓発が必要と思っています)。行政からの実地報告や,法律家からの個人情報保護を含めた対応についても記載されており,実際の現場で役立ちます。

最後に,事例を紹介しています。実際の現場ではまったく同じ症例はいないとは思いますが,参考になると思います。かなり複雑な事例も盛り込んでいますので,“このような解決法があるのか”といった気づきもあるかと思います。事例によっては,各地域での対応に差異があるかと思います。各職場において,これらの事例を使い模擬カンファレンスを行ってみるのもよいかと思います。事例から読みはじめ,それぞれ疑問点を解決するために総論・各論に進むのもよいかもしれません。

今後,PEEC コースやJ‒MELS コースにおいて本書が副読本となり,将来的にはPEEC コースのような多職種模擬カンファレンスにつながっていけばよいかと思います。

日本臨床救急医学会 妊産婦の自殺予防のためのワーキンググループ委員長


岸 泰宏